カンプール行きのバスは、五時少し前にやってきた。車内に乗り込んだ僕は溜め息をついた。「ついにここまで零落れたか……」紛れもない路線バスだったのである。コルカタからパトナーまで乗ったバスは、リクライニングは壊れていたものの、一応、ひとりにひとつの椅子というスタイルだった。しかしカンプール行きバスは通路を挟んで左右にベンチ状の椅子が並べられているだけだった。幅から想像すると、片方がふたり、もう片方が三人がけである。
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座席の指定はなく、客は勝手にどこでも座ればよかった。もちろん背は垂直だ。前の席との間隔は短く、足は斜めか大きく開かないと座ることができない。トイレや空調、ビデオなどは望むべくもなかった。完全に短い距離を乗る人のためのもので、僕らのように始発から終点まで乗る客など想定していないつくりだった。カンプールという街まで、このバスに八時間も揺られなくてはならないのだ。切符は車内の車掌から買うスタイルだった。路線バスなのだから当然といえば当然である。だが安かった。カンプールまでひとり百七十二ルピー、五百円ほどである。しかし、この安さを素直に喜ぶ気にはとてもなれなかった。