気がつけば28を数える年齢。来年3月には29歳になってしまう。1年ごと確実に後輩のできる職場である。俗に言うお局様になる前に最高の花道は“結婚”ということなのだ。とっくに、花道を歩き切っていなければならないのに、このままでは女としての花を散らしてしまうことになる……。初々しかった銀行レディー一年目の自分の姿はすでに遠くになりにけり……。「早くプロポーズしてほしい!」彼とは付き合い始めて、1年。24歳の彼のことを、ちょっと頼りないと思う時もある。だけど、ドライブにいく時、助手席で口開けて寝てしまっても許してくれる彼の優しさとか、存在そのものが、彼女にとってなくてはならないものになっている。そして30の声を聞くまでには結婚したいと思っている。『式は国内で普通に。対等にお互い協力しあって、2人で生きていくような関係になりたい』。ささやかな結婚への夢もある。もちろん彼とも、結婚について具体的な話をしている。お互いの両親にもとっくに紹介済み。あとは、彼からのプロポーズを待つばかりのはずなのに、実は彼女はここまできて結婚に躊躇している。思いっきり不安を感じている。今、この人以外と結婚することは考えられないというほどの相手にめぐり会いながら、このもったいないほどのためらいは、一体なにゆえなのか?それは、女ならば誰もが「そうよね!」とうなずく現実的な問題だった。『彼の収入で満足できるか、どうか……』。「あれもしたい、これもしたいという欲求を満たしてくれるかどうか。そして、何よりちゃんと2人でやっていけるかどうかですよね」。今年、大学を出たばかりの、彼。若さと行動力なら誰にも負けません!なんて選挙中の政治家みたいなキャッチフレーズも、今だから魅力的。でも、これが、いざ結婚して、夫となった時、自分とどっこいぐらいのサラリーで、しかもやっと社会人として人生のスタートラインに立ったばかりの人となると、どうだろう……。結婚したら、仕事は当分の間続けることになる。あまりしがみつきたくない職場だけど「私は既婚」の立場があるから、耐えられる。だけど、子供を産んだら仕事は辞めるという希望は、かなえられなくなるかもしれない。彼女は、ゆくゆくは家庭に入って専業主婦になることを望んでいる。ずうっと家族と同居して、家にいる母のことを見てきたからでもあるだろう。「彼に頑張ってねってよく言うんです。彼のことは本当に好きだから、それができないぐらいで駄目にしたくなんてないですから」。でも、彼女の躊躇は続く。