検査漬け、薬漬けなどというのはまさに知的権威悪用の好例なのでしょうが、このような場合はエセ道徳的権威や過度のカリスマ的権威も同時に適当におりまぜていることはいうまでもありません。それというのも、科学的医学の時代だといっても医学という学問はまだまだ不完全な情報のシステムであるため、三つの権威が悪用される余地が相当幅広く残っているからでしょう。善用にしろ悪用にしろ、自覚しているにしろいないにしろ、医者は権威主義の衣をまとって患者に臨むことになりますから、その一方では、患者はどうしても卑屈にならざるをえません。専門家さんは「お医者の言葉一つで生きもし死にもしそうな気になる病人というものは、つまり独立した人間ではなく医者の従属物なのである」と書いています。たいていの人は医者の前に出るとおどおどしますし、時には医者や看護婦に知らず知らず媚びる場合さえあるようです。医者のご機嫌をとるために、大して良くなってもいないのに「おかげ様でたいへん良くなりました」などという患者がいないわけでもないので、医者は気をつけなくてはならないのです。